コラム

2024.01.31

「3行ポジティブ日記」の実践

私たちは社会生活を送る中で、時として様々な困難なことに出会います。そのたびに、心はへこみ、自分はダメな人間だと思いつめ、場合によっては精神的に支障をきたすこともあります。私たちは職場や学校、家庭などの中で多くの人と接します。複雑に絡み合う人間関係の中で強いストレスを受け続け、いつの間にか元気をなくしてしまっている人が多くなっているように思います。メンタル不調で休職者が増加している現状は現代社会が解決しなければならない重大な課題です。ストレス社会の中で生きる私たちはどのようにストレスに対処し、メンタルを回復させればいいのでしょうか。

皆さんは「レジリエンス」という言葉をご存じでしょうか。「回復力」「復元力」「跳ね返り」などを意味する英単語です。この「レジリエンス」を心理学では、「困難にぶつかっても、しなやかに回復し、乗り越える力=精神的回復力」と定義しています。別の言い方をすれば、「折れない心」や「へこまない心」、「心のしなやかさ」などと表現される概念になります。脳科学者で早稲田大学教授の枝川義邦氏は「心の持ちよう(捉え方・認識の仕方)に、脳活動が影響を受ける」、そして「“心の持ちようの力”を応用すれば、ストレスをエネルギーに変えられる」と言っています。また、精神科医で作家の樺沢紫苑氏は、「レジリエンス」を高めることでストレスを受け流すことができ、心が折れなくなる、逆境や困難から素早く立ち直る“打たれ強さ”を身につけることができるといいます。

レジリエンスが高い(打たれ強い)人には一般的に次のような特徴があるようです。

  • 失敗しても、それを糧に成長できる
  • メンタルが落ち込んでからの復活が早い
  • 困難なミッションに対して、「自分は達成できる」と思い、挑戦する
  • 自分の強みや弱みを理解している
  • ありのままの自分を受け入れている
  • 他人と自分を安易に比較しない

このような人は、自尊感情や自己効力感が高く、自分には価値があると感じ、絶えず前向きに物事を捉え、ポジティブ思考が身に付いていると感じます。レジリエンスを高める必要性を痛感します。

では、どうすればレジリエンスを高めることができるのでしょうか。

そのことについて樺沢氏は「3行ポジティブ日記」を推奨しています。「3行ポジティブ日記」とは、一日の終わりに今日の楽しかったことや前向きに感じられた出来事をたった3つ書くだけの日記です。

  • 今日の夕食は家族と一緒で嬉しかった
  • 職場の同僚と世間話で大笑いした
  • やっと取引先の担当者と連絡が取れた
  • ふと見上げたら、青空にかかる一筋の雲がきれいだった  等々

そして、「3行ポジティブ日記」を実践する上で、次の3つのルールを守って行うことが肝心だ、指摘しています。

  • 寝る直前に書く
  • ネガティブなことは書かない
  • 必ず3つ書く

 

樺沢氏によると、寝る前の約15分間は「記憶のゴールデンタイム」で、最も記憶に残りやすい時間だそうです。この15分の間に楽しいことを思い出しながら書くことにより、自分や周りの人の言動を肯定的に捉えることができ、ポジティブになれます。自分にしか分からない、ささやかな“3つの良かった”を見つけ出し(時として、絞り出すかもしれません)、床につく。この習慣化こそが、「レジリエンス」を高めるトレーニングだと思います。

私は「3行ポジティブ日記」を令和6年の幕開けから始めています。だんだんと“今日の楽しかった探し”が面白いと感じるようになり、「今日もいい一日だったな」と思いながら、寝床についています。「折れない心」や「へこまない心」、「心のしなやかさ」を高めるために、この「3行ポジティブ日記」を続けることを今年の目標にしました。